製造業の改善活動において、QC(品質管理)と並んでよく用いられる言葉が「VA/VE」です。今回は、何となく分かっているようでよく分からない「VA/VE」について改めて解説します。
- VA/VEとは?
- VA/VEにおける5つの基本パターン
- 鍛造加工におけるVA/VE
- (1)イニシャルコストの削減
- (2)材料費の削減
- (3)工程の削減
- (4)加工時間の短縮
- (5)組立時間の短縮
- ここがポイント!
■VA/VEとは?
「VA」とは「Value Analysis(価値分析)」の略で、既存の製品の材料や工法を分析し、価値を上げる提案を指します。また、このVAと並び称される「VE」という言葉がありますが、こちらは「Value Engineering(価値工学)」の略で、VAと同様の提案を「新製品の設計段階」から行うことを意味します。
「VA/VE」の歴史は意外と古く、1947年にGE社のL.D.マイルズによってValue Analysisが発案され、その後、1954年にアメリカ国防総省がValue Engineeringという概念へ発展させました。1960年頃、日本にも導入され、 メーカーの資材部門から始まって企画・開発・設計から製造・物流等に広がり、あらゆる業界の業務改善と収益力アップに役立っています。
■VA/VEにおける5つの基本パターン
実際のところ、現場での会話では、VA/VEは「コストダウン」と同じ意味で使われているケースが多いのではないでしょうか。確かにコストダウンは重要ですが、それはVA/VEの一側面に過ぎません。
VA/VEの基本に立ち戻ると、「価値(V)は、機能(F)をコスト(C)で割ったもの」と定義されています。
ここで言う「機能」とは、工業製品における実用的な効用のほか、服飾で言えばデザインや色彩、食品で言えば味や香りなど、欲しいと思わせる魅力も含めて「機能」と呼んでいます。
これらの関係を式で表すと、
価値=機能/コスト |
つまり、価値を向上させるためには、単純なコストダウン以外にもさまざまな方法が考えられ、下記の5つのパターンに集約できます。
この中で、革新型はかなり難易度の高い類型と言えます。また、戦略型については、コスト上昇分を大きく上回る機能拡大を実現できることが必要で、 ムダ削減型については、機能の削減分を上回るコスト減少が得られることが必須となります。。
■鍛造加工におけるVA/VE
鍛造加工におけるお客様へのVA/VE提案(コストダウン型)の視点は、大きく分けて次の5つになります
(1)イニシャルコストの削減
鍛造加工におけるイニシャルコストは、鍛造金型の製作費となります。
いかに鍛造金型の製作コストを下げるかだけでなく、量産によってどのようにイニシャルコストを回収できるかという視点も重要になります。
(2)材料費の削減
材料費の削減は、ダイレクトに製品のコストダウンにつながります。
切削から鍛造への工法転換や中空鍛造化、また鍛造金型の形状や工程における工夫により、いかに省材料化・省切削化できるかがポイントです。
(3)工程の削減
熱間鍛造品は、材料の切断に始まり→加熱→鍛造→バリ抜→(その後、必要に応じて表面処理)…という工程をたどるのが一般的です。
しかし、製品設計の見直しにより形状変更を行うことで、バリ無し鍛造が可能となり、最後のバリ抜工程を削減することができます。
(4)加工時間の短縮
ワンショットによる鍛造や、切削レスの実現などにより、加工時間を短縮することができます。
また、ロボット導入による24時間生産も加工時間の短縮に大きな効果が得られます。
(5)組立時間の短縮
複数部品をそれぞれ完成させた後、組立ているケースでは、鍛造による一体化成形により、組立工程を削減することが可能となります。劇的なコストダウンを実現できる、戦略的な取組みとなります。
■ここがポイント!
VA/VE提案は他にも、より低コストで加工できる形状の検討や、公差の緩和、他製品との共通部品化等、さまざまな視点が考えられます。
弊社におけるVA/VE提案の具体例については、次回記事で詳しくご紹介いたしますので、ぜひご参考になさってください。
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