【知識】切削加工から「鍛造」に転換し、コストダウンを実現

鍛造について

金属部品を製造する際、切削加工では大量の切粉が発生するため、材料費の負担が大きくなります。また、切粉の発生はSDGsの観点からも好ましくなく、できるだけ廃棄物の少ない加工が求められます。

この問題を解決する決め手となるのが、「鍛造」です。今回は、切削加工を鍛造加工に転換するメリットについて、分かりやすく解説します。

材料コストがかさむ切削加工

切削加工(削出し機械加工)とは、切削機械を使って棒材から目的の形を削り出す工法で、具体的には旋盤やフライス盤・ボール盤・NC工作機械・マシニングセンタ等が用いられます。

切削工法

切削加工は、刃物で材料を直接削り出すため金型が不要で、初期費用が安くなり、小ロット生産では安価になります。しかし、1品1品削り出すのに加工時間がかかるため、大ロットの大量生産には不向きな加工方法と言えます。

また、大量の切削屑が生じ、どうしても材料費がかさみます。特に、高価な金属材料を使用する場合は、切削加工においては文字通り「身を切られるような出費」を覚悟しなくてはなりません。

そこで、担当者様は、鋳造等への工法転換を検討されていると思いますが、鋳造では製品内部に「す」(空洞)を生じたり、強度不足品質のバラツキが懸念されるなどの問題があり、一筋縄ではいかないのが実情です。

切削を鍛造に換えるという選択肢

こうした事態を打開する第三の選択肢となるのが、鍛造工法です。

鍛造工法へ転換すれば、切削加工時に発生していた大量の切粉は無くなり、材料費を大幅に節約することが可能になります。その効果は絶大なものがあります。

鍛造工法

鍛造化に関するよくある質問と答え

鍛造化にあたっての疑問点をQ&A型式でまとめました。

Q. 現在、切削加工で使用している材料を変更する必要がありますか?

A. 黄銅(真鍮)、アルミ、鉄については、基本的には、切削材料をそのまま鍛造に使うことが可能です。

例外として、快削黄銅(C3604)は、切削性を高めるために鉛分が多めに含まれていますので、延びが悪く鍛造には適していません。その場合は、鍛造用黄銅(C3771)等へ変更すると良いでしょう。

もちろん、鍛造化に際して、材質を黄銅からアルミへ変更し、より積極的に軽量化を図るのも一案です。

なお、「中空」での鍛造に適しているのは黄銅、アルミのみで、銅・鉄は中空鍛造には適していません。また、鋳造用の材料と、鍛造用の材料とは物性が全く異なります。鋳造用の材料は、鍛造には使用できないとお考えいただければ結構です。

Q. 熱間鍛造か冷間鍛造、どちらで加工すればよいでしょうか?

A. 熱間鍛造・冷間鍛造の違いは、鍛造温度の違いとなります。

「熱間鍛造」は材料を高熱で加熱した状態で鍛造を行いますが、「冷間鍛造」では常温に近い材料温度で鍛造を行います。

熱間鍛造は、高い強度を得ることができ、また複雑な形状の製品製造に適しています。一方、冷間鍛造は、表面の仕上がりが綺麗で、寸法・形状精度を出すことは比較的容易ですが、成形には大きな力が必要となります。 基本的に、冷間鍛造は「手のひらサイズ」までの「大ロット」向きであり、一般的には用途が限られていると言えるでしょう。

Q. 鍛造でメリットが出るサイズ・形状とは?

A. 材料単価が高く、サイズが大きい製品ほど、切削加工に比べて鍛造化のメリットが大きくなります。

また、形状についても、突起のあるものや、パンチを差し込んで中空形状に加工できるものは、切削加工よりも鍛造加工によるメリットが大きくなります。

■ここがポイント!

鍛造化のメリットとして、切削加工よりも強度が出ますので、その分薄肉化を図ることができます。また、フランジのビス取付穴など、鍛造加工時に開けておくことで、切削レスでの加工が可能となります。

つまり、金属部品の製造コストダウンを目指す上で、「鍛造」への工法転換はさまざまなメリットがあり、検討に値する選択肢と言えるでしょう。


白光金属工業では、豊富なノウハウによりこうした課題を解決しています。これからシリーズで 成功事例をご紹介してまいりますので、ぜひご参考になさってください。

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