熱間鍛造とは、金属材料を真っ赤になるほど加熱し、柔らかい状態にした上で、プレス機によって圧力をかけ、金型成形する金属加工法のことを指します。ここでは、熱間鍛造と、鋳造や棒材からの削出し機械加工といった他の加工法との違い、そして熱間鍛造ならではの優位性についてご説明します。
金属は、ある温度以上に加熱すると柔らかくなり、歪んだ結晶が正常な結晶に変化します。これを「再結晶」と言い、金属が持つ特殊な性質の1つです。「熱間鍛造」とは、この「再結晶温度」以上に熱せられた金属に対して行う鍛造のことで、これによりさまざまなメリットを得ることができます。
ちなみに、金属を「再結晶温度」以上の高温で成形する「熱間鍛造」に対し、「再結晶温度」以下の常温で成形する鍛造のことを、「冷間鍛造」と呼んでいます。
■熱間鍛造工程 概略図
鍛造品 | 棒材からの削出し品 | 鋳造品 | |
組織形状図 | |||
組織 | 材料の形状に沿って メタルフローラインが 流れている |
加工した部分で メタルフローラインが 切られている |
メタルフローライン無し |
性質 | 反復曲げ応力に強い | 反復曲げ応力に弱い | 反復曲げ応力に弱い |
鍛造では、材料に製品の形状に沿った鍛流線(メタルフローライン)が形成され、粘りや靱性を高めることができます。しかし、棒材からの削出し品や鋳造品等では、内部に鍛流線が形成されず、内部組織が不均質で、反復曲げ応力に対して脆弱となります。この鍛流線の形成は、鍛造ならではの特長です。
鍛造には、その加工温度によって「熱間鍛造」と「冷間鍛造」があります。熱間鍛造とは、金属材料を高温に加熱した状態で鍛造を行うものを指し、冷間鍛造とは金属材料を加熱せず常温に近い温度で加工を行うものを言います。
金属には、赤く高温加熱すると、それまで変形を受けてゆがんでいた内部組織(結晶粒)が緩み、ゆがみのない新たな結晶粒となる性質があります。この温度を「再結晶温度」と言い、この再結晶温度以上で行われる鍛造を「熱間鍛造」と呼んでいます。逆に、再結晶温度以下の常温に近い温度で行われる鍛造が「冷間鍛造」です。
熱間鍛造に適した温度は、鉄の場合、一般に1100~1250℃、真鍮は700~750℃、アルミニウムでは400~450℃ぐらいです。この時、プレス機で材料の上下に金型を当てて圧力をかけると、金型形状通りに加工することができます。これを「熱間型打ち鍛造」と呼んでいます。
複雑形状の製品製造が可能で、高い強度を得られるなど、大きなメリットがある熱間鍛造。その特性を活かして、さまざまな分野で活用されています。
熱間鍛造部品は、その他あらゆる業界の金属部品加工に幅広く採用されています。