鍛造のメリット

鍛造は生産効率が高く、高強度・高靱性を得ることが可能で、
加工時間の短縮と、薄肉化・省材料化にも貢献できます。

鍛造のメリットは、生産効率の高さと、鍛流線の形成により、高い強度・靱性が得られることにあります。薄肉化や中空形状により材料費の低減が図れるほか、複数部品を一体成形することで工程短縮も可能です。

強度や加工時間・薄肉化・省材料化等、多様なメリットを保有

鍛造加工のメリットは、生産効率が高く、材質の改良によって高い強度・靱性が得られることです。金属を構成している結晶組織が、鍛造の際につぶれて引き伸ばされることにより、製品の形状に沿った鍛流線(メタルフローライン)を形成し、靱性を高めることができます。鍛流線とは、繊維状の金属組織の流れのことを言います。

■鍛流線の形成

鍛流線(メタルフローライン)の形成

このように鍛造により強度が高められる分、薄肉化や中空構造が可能となり、材料費の低減が図れるほか、複数部品をワンショットで成形することもできます。複雑形状の部品等は、これまでいくつかのパーツに分け切削加工を行った後、溶接等により完成させていましたが、鍛造なら一工程で最終形状まで仕上げることができ、品質管理も集約化できることもメリットとなります。

コスト面においては、型鍛造は金型製作の初期費用が必要であることから、小ロットの場合は鋳造の約3倍以上のコストがかかるケースもあります。しかし、大中ロットの場合は、工程が多く人手がかかる鋳造に比べて、型鍛造は加工時間が短くて済み、効率的な生産が可能です。さらに、薄肉化による材料費の削減も実現できるため、これらのトータルコスト削減効果を活かすことで、金型製作にかかる初期費用を早期に回収することが可能となります。

鍛造の加工精度は、鋳造加工と削出し機械加工の中間に位置しますが、近年では鍛造技術の進歩により、製品によっては切削・研削等の後加工を行う必要がないほど高い精度を得られるようになりました(ちなみに、このように加工後、最終形状にするための機械仕上げ加工を行う必要がほとんどない精密加工を、「ニアネットシェイプ」加工と呼んでいます)。

鋳造さらに、において問題となる充填不良や、内部ガスによる空洞(す)が発生しないことや、削出し機械加工における大量の切削屑等が発生せず、加工時間も短く生産効率が高いことも、鍛造のメリットです。

以上、鋳造、削出し機械加工と鍛造との比較を、下記の表にまとめました。

■鋳造や削出し機械加工と、型鍛造の比較
  鋳造 削出し機械加工 型鍛造
強度
金型 必要 不要 必要
加工時間
精度
ロット 小中ロット 小ロット 大中ロット
薄肉化
省材料化

プレス曲げ加工と鍛造の違い

では、プレス曲げ加工と鍛造とは何が違うのでしょうか。

JIS規格において、鍛造とは「工具,金型などを用い,固体材料の一部又は全体を圧縮又は打撃することによって,成形及び鍛錬を行うこと」と定義されています。
つまり、鍛造には「成形」と「鍛錬」の両方の要素が含まれているということです。

例えば、板をプレス機で曲げるだけでは、単なる「プレス曲げ加工」であり、鍛造とは呼べません。鍛造と呼ぶためには、材料の「体積移動がある」ことと、それによって先述の「鍛流線が生じる」ことが必要となるからです。

■プレス曲げ加工と鍛造の違い

プレス曲げ加工の模式図
プレス曲げ加工では、成形に伴う材料の体積移動がないため、鍛流線は生じない
鍛造の模式図
鍛造では、体積移動により材料が成形・鍛錬され、製品形状に沿った鍛流線が生じる

内部品質の向上・強度の向上はもちろん、トータルコストダウンも可能

最後に、鍛造のメリットを表にまとめました。

まず、「内部品質の向上」については、鍛造は鋳造のような内部欠陥を生じることがなく、圧力を加えることで金属の結晶粒が細かくなり、組織が緻密で均質になります。
そして、製品形状に沿った鍛流線(メタルフローライン)が生成されることから、硬さ・引張強度等の機械的性質も高めることができ、「強度の向上」を実現できます。この“連続した鍛流線”の形成は、鋳造や削出しでは得られない、鍛造ならではの特長です。
さらに、初期費用として鍛造金型の製作費が必要となりますが、削出し機械加工と比較して材料ロスを大幅に削減することができるため、大型部品・量産品・高価な材料ほど大幅な「トータルコストダウン」を図ることが可能となります。

■鍛造化のメリットについて
鍛造化のメリット 解説
内部品質の向上 内部欠陥を生じるおそれがある鋳造と比較して、鍛造は圧力を加えることで金属の結晶粒が細かくなり、組織が緻密で均質になる。
強度の向上 鍛造により材料形状に沿った鍛流線(メタルフローライン)が生成され、硬さや引張強度等を高めることができる。
トータルコストダウン 鍛造には初期費用として鍛造金型代が必要だが、削出し機械加工と比較して必要最小限の材料で済むため、大型部品・量産品・高価な材料ほどトータルコストダウンが可能になる。
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